広島県で神楽として唯一、国の重要無形文化財に指定される『比婆荒神神楽ひばこうじんかぐら』。
今年も奴可神社(広島県庄原市東城町小奴可)で、11月21日(土)の夜から22日(日)の朝にかけて夜通しで、恒例神楽が執り行われました。
比婆荒神神楽は、神官と神楽社が一体となって執り行う神事。
能舞の前に、まずは神様をお迎えします。
この日、奉納された演目は「岩戸の能」「国譲り能」「八重垣の能」の3つ。
じつは奉納される能舞は、古事記や日本書紀がもとになっているので、それらを知っていると、もっと楽しめます。
能舞『国譲り』のストーリーを紹介!
天照大御神アマテラスオオミカミが、皇孫 邇邇芸命ニニギノミコトに日本の国土(葦原中国アシハラノナカツクニ)を統治させるため、その準備として、高天原タカマガハラからつぎつぎ使者を派遣するのですが、ことごとく、当時、国を治めていた大国主命オオクニヌシノミコト(大黒様)に懐柔されてしまいます。
国譲りが計画通りに進まず、天照大御神はついに、武力に長けた二神、経津主命フツヌシノミコトと建御雷命タケミカズチノミコトの両神の派遣を決意。
二神が下界に降り、大国主命にこの葦原の中国は天津神の子孫が支配するべきなので、国土を献上するようと申し入れます。
しかし、豊かな実りと豊作を約束し、平和に国を治めていた大国主命は当然その申し入れに納得がいかず激論になり、交渉は決裂してしまいます。
ついには合戦となりますが、そこに稲背脛命イナシが仲裁に入ります。
話し合いの結果、大国主命の子、事代主命コトシロヌシノミコト(恵比寿様)の意見を聞くことになり、出雲の美保の岬に迎えに行きます。ちなみにこのとき事代主命は、鯛釣り中。
そして、国土を献上するべきか相談したところ、事代主命は国土を献上するべきだと答えました。
そこで大国主命は、老いては子に従えとばかりに国土の献上を決意します。
両神を呼びだし、そのことを伝えます。
すると大国主命、事代主命に神社、社領を献上することを約束し、ことは一件落着、国譲りは成功したかに思われたのですが・・・。
一方的な国譲りに、1人異論を唱えたものがいました。大国主命の子の建御名方命タケミナカタノミコト(鬼)です。
国を譲ってなるものかと、勇敢にも両神に戦いを挑みます。
しかし、奮闘むなしく建御名方命は、唐杖を奪われ、次に刀も奪われ、最後に長刀まで奪われ、ついに降参するのです。
そして、両神は無事、使命を果たし天孫降臨が実現します。
この段階で、夜中の2時前!
この後、しばらく「中入れ」と呼ばれる休憩が入り、続いて朝方まで『八重垣の能』が奉納されます。
夜通し、氏神様と一緒に楽しむ比婆荒神神楽、これからもずっと守り継がれ、次世代に繋いでいってほしい郷土が誇る伝統芸能です。
by RIE KIKKAWA