比婆郷土料理研究会『藁スボの山仕事べんとう』


2015年6月13日、「山仕事べんとう」をテーマに比婆郷土料理研究会を開催しました。

もちろん今回も講師は、ひばん婆お富こと比婆郷土料理研究家の小林富子さんです。


今回は、山で仕事をするときに持っていく昔ながらの藁スボの「山仕事べんとう」を教わりました。お弁当のおかずをそれぞれいろいろな葉っぱで包んで、それを藁スボに詰めるお弁当です。



藁でできたお弁当箱!?

ところが出来上がってみると、この藁スボのお弁当、思いのほかオシャレな仕上がりに・・・。


藁スボ弁当に詰めた料理は、

 

・大型むすび2種

・山菜煮しめ

・焼き魚(塩サバ)

クサギナの炒り煮

・漬けもの         の5品

 

 

まずは、おむすびとおかずづくりからスタート!


おむすびは梅干しを入れて山椒味噌をぬった焼きおにぎりと、塩むすびをちゅうじゃく漬け(比婆地方の家庭で漬けられる高菜の漬けもの)の葉で包んだものの2種類。


とにかく大きくにぎるのがポイントです。両手でやっと握れるくらいの大きなおむすびで、山での重労働にはこれくらいの大きさじゃないと体力が持たなかったのでしょう。


おむすびにぬった山椒味噌も、さわやかな香りで食欲をそそります。



 煮しめは、フキやわらび、ハチク(筍)などの山菜とシイタケ、ごぼう、にんじん、焼き豆腐をいっしょに甘辛く濃いめの味で煮つけました。

 

昔は、焼き豆腐をいろりで焼いてつくっていました。テッキ(囲炉裏で使う鉄製の焼き器。お餅や団子などを上にのせて焼いた)の上に笹の葉を敷いてその上に豆腐をのせて両面を焼き、それを煮しめにしていたそうです。


焼き魚は、塩サバです。比婆地方は、海が遠く昔は新鮮な魚を手に入れることが難しかったため、魚といえばもっぱら保存のきく塩サバや塩鮭だったそうです。



できあがった料理をそれぞれ野の葉でつつむ!

 

おかずを、それぞれ違う種類の葉っぱで包んでいきます。

 

大型むすびは「竹の皮」、煮しめは「朴の葉」、焼き魚は「クマ笹の葉」、クサギナの炒り煮は「クズの葉」、漬けものは「フキの葉」で。それぞれの葉での包み方を教わりました。

 

包んだら藁でしっかりと結びます。


いよいよ、藁スボづくり!


藁を束ねて両端をしっかりと藁でぐるっと巻いて縛ります。

そして、真ん中を広げてそこに細い藁縄を編むように通していきます。


この藁縄づくりに必要な「藁をなう」という作業が難しい!小林富子さんが藁をなうとさっさっさっとできあがるのに、私たちにはこれが難しいのです。


ちなみに「藁をなう」とは、両手をつかって藁に撚りをかけながらさらにそれを同時に1本に撚り合わせて縄状にしていくことで、昔は藁をなって、藁ぞうりを作るなど日常に欠かせない作業だったそうです。


藁縄を通したら、藁を押しひろげて、そこに料理を詰めます。


すべて詰めたら、藁縄を結んで豪華版の山仕事べんとうの出来上がり!


他にも、山仕事は汗をかくので作業中に水分補給できるよう、生のきゅうりやトマトも持って行ったそうです。



そして、食べる時には箸を山で調達します。クロモジやミツバウツギの枝をポキッと折って箸にしていました。


ミツバウツギは、比婆地方では「ハシギ」と呼ばれているそうで、これは簡単に手で折れるので箸にするのにちょうどいいことからそう呼ばれているそうです。


今回の比婆郷土料理研究会は、なんだか料理よりも藁細工がメインだったような・・・。


昔は身近にあった藁も最近ではなかなか手に入りにくくなっています。お米をつくっている農家でも藁のある農家は年々少なくなっています。


野の葉をお皿に、藁で作ったお弁当箱。フォルムもなんだかかっこいい!


昔は、日常のお弁当だったのでしょうが、今ではとっても贅沢なお弁当です。


by RIE KIKKAWA